第163回芥川賞・直木賞が15日決まった。芥川賞は、高山羽根子さんの「首里の馬」、遠野遥さんの「破局」の2作。直木賞は馳星周さんの「少年と犬」が選ばれた。コロナ禍のもとで選考はどう行われ、どのような議論が交わされたのか。選考委員の講評からたどった。
まず発表されたのは直木賞。講評を担当した選考委員の宮部みゆきさんによると、大阪在住の高村薫さんはリモートで参加。東京に集まった他の選考委員も個別に距離を取り、アクリル板を立てての選考だった。宮部さんは、「いつものように距離が近かったらもっと議論が伯仲したかもしれないが、それで結果が左右されるほど読み込んでいないわけではなく、議論は尽くせた」と振り返った。
選考委員は、各候補作に「○」「△」「×」を付けて投票し、議論する。受賞作の「少年と犬」は、最初の投票から票を集め、「割と今回はすんなりと話がまとまった」。宮部さん自身も「少年と犬」を推したという。「犬がまったく擬人化されていない、犬と出会う人間のストーリーがつづられているのが非常に優れている作品だという声が多かった」
馳さんは7度目の候補入りでの受賞。「ご活躍はみな知っている。『不夜城』の馳さんが犬で受賞というとちょっと違う気もするかもしれないが、犬と出会う人物たちは馳さんでないと書けなかったと思う。そういう意味では代表作」。宮部さんは、選考会が終わった後、馳さんに電話したと明かした。
ここまではスムーズに進み、「もう一作を出すか」で議論があったという。有力だったのは、今村翔吾さんの「じんかん」と伊吹有喜さんの「雲を紡ぐ」。どちらも「×もあったが○も多かった」ため、馳さんと合わせて2作受賞とするか、9人の選考委員で投票したが、1票差で「少年と犬」のみの受賞に落ち着いた。
今村さんの戦国武将・松永久秀…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル